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M — 02 . DOPPIO(北イタリアのオフィス文化)
前のお手紙のあと、
想像していた以上に、たくさんの方が
お返事を、寄せてくださいました。
1つひとつ、ゆっくり拝読しました。
皆さまの「理想のコーヒー景色」のなかには、
──「自分の手で淹れた1杯を、誰かに振る舞ってみたい」
──「あの店の1杯を、家で再現してみたい」
そんな、静かな願いが、たしかに、ありました。
その願いに、今日、お応えします。
前のお手紙では、
朝の10分間で、"職人の1杯"を、超えていく ──
そんな景色を、お話ししました。
そして、お約束しました。
それを、家で再現する方法を、
次の手紙でお渡しする、と。
私たちが、誰か ──
これまで、世界中のお客様のキッチンに
コーヒーマシンをお届けしてきた、
家庭用エスプレッソマシンの、小さなチームです。
だから、その答えを、お渡しできます。
―― 高い豆も、業務用の機材も、いりません。
プロと家の差を、
家のキッチンで埋めるために
特に効いてくる、
3つの条件があります。
なぜ、プロの1杯は、
家のものより、美味しいのか。
多くの方は、「機械の差だろう」と、
そう、思っています。
けれど、本当のところは、
もう少し、深いところに、あります。
世界中の職人が、毎日、
意識して整えている、いくつかの条件。
そのうち、家のキッチンでも揃えられるのが、
この、3つです。
― 豆の、鮮度。
― お湯の、温度。
― 抽出の、圧力。
この3つを、自分の手で揃えられたとき、
あなたの家の1杯は、
プロの1杯に、確かに、近づいていきます。
順に、お話しさせてください。
豆は、挽いたその瞬間から、
香りが急速に逃げていきます。
30秒で半分、
と言う淹れ手もいるほどです。
だから、プロは、必ず「直前に挽く」。
家の1杯と、もっとも違うのは、
ほんとうは、ここかもしれません。
―― 今日、家で試せること。
「淹れる直前に、豆を挽く」。
前のお手紙でも、お伝えしたお話です。
もし、すでに試してくださっていたら、ありがとうございます。
その小さなひと手間で、
家の1杯の香りは、確かに、変わります。
振る舞った相手の、
最初のひと口の表情が変わる ──
その瞬間こそ、職人の領域への、第一歩です。
意外と、知られていないことがあります。
沸騰したばかりのお湯は、
じつは、コーヒーには、
少しだけ、熱すぎるのです。
豆が持っている甘みや、まろやかな香りは、
90度から96度のあたりで、
もっとも、よく開きます。
100度のお湯で淹れると、
苦味と渋みが先に出てしまい、
本来の甘さが、奥へ引っ込んでしまうのです。
プロのマシンが、安定して美味しい理由のひとつは、
この温度を、ずっと、ぶれずに保っていること。
じつは、家庭で再現するときに、
いちばん不安定になりやすいのが、ここなのです。
―― 今日、ご家庭でできる工夫。
お湯は、沸騰直後ではなく、
ひと呼吸、置いてから注ぐ。
ケトルから1度、別の器に移すだけでも、
お湯は数度、落ち着きます。
味の角が、ふっと丸くなります。
ただ、毎朝、その工夫を続けるのは、
意外と、難しいものです。
注ぐタイミング、季節、ケトルの素材で、
温度は、かんたんに、数度ずれてしまう。
家のキッチンで、温度を、毎朝、寸分の狂いなく整える ──
ここを、どう超えるか。
その答えは、次のお手紙で。
カップに注がれたコーヒーの上に、
きつね色の薄い膜が、ふっと立ち上がる ──
クレマ、と呼ばれる、あれです。
あれは、ただの泡では、ありません。
豆のなかに眠っている香りの成分が、
圧力をかけられて初めて、表に出てきた姿です。
その圧力は、おおよそ9気圧。
これより弱いと、香りは奥に隠れたまま。
強すぎると、苦味だけが前に出てしまう。
9気圧というのは、長い時間をかけて見つかった、
ちょうどいい場所なのだそうです。
そして、この9気圧という圧力は、
人の手のひらでは、どうしても、作れません。
家庭で再現するには、機械の力が、要ります。
せっかく圧力をかけて引き出した香りも、
冷たいカップに注いでしまうと、
ほんの10数秒で、ぼやけはじめてしまいます。
―― 今日、ご家庭でできる工夫。
淹れる前に、カップを温めておく。
最後の1口まで、味が変わらなくなります。
お湯を、軽く張っておくだけ、で構いません。
たったそれだけで、最後の1口が、
最初の1口と、ほとんど変わらない味で、
着地してくれます。
けれど、9気圧そのものを家で作る ──
この1線だけは、機械の力が、要ります。
その答えは、次のお手紙で。
振る舞った相手が、一瞬、
そのクレマを、黙って見つめる。
── その小さな1秒が、職人と、家の境目を、
確かに、超えていきます。
前のお手紙では、10通りのメニューを、
まず、ご紹介しました。
そのうち、2つの動画は、
もう、お見せしました。
今日は、残りの8つ ──
ナポリのドッピオから、
アイルランドのアイリッシュ・コーヒーまで ──
世界中のプロが、毎日淹れている所作を、
ぜんぶ、いまから、ご覧いただきます。
この3日間で、これを見終えたあなたは、
もう、10通りのコーヒーを、
自分の手で淹れられる側の、人間です。
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美味しい1杯のためには、
ほんの少しだけ、
人の手の温度が、要るのです。
―― 私たちが、ずっと信じてきたことです。
世の中には、ボタンを1つ押すだけで、
コーヒーが出てくる機械があります。
とても便利なものだと、思います。
そのうえで、私たちが、ずっと信じてきたことが、
ひとつだけ、あります。
―― 自分の手で、ひと手間を加えたとき、
コーヒーは、もっと美味しくなる。
豆を、淹れる直前に挽く。
お湯を、ひと呼吸落ち着かせる。
カップを、温めておく。
── そのささやかな関わりが、
その日の自分と、その日の豆に、
ぴったり合った1杯を、つくってくれる。
だから私たちは、ずっと、
「人の手が、ほんの少しだけ関われる」
コーヒーマシンを、つくり続けてきました。
豆を挽く。
カップを温めておく。
抽出のはじまりを、自分のスイッチで合図する。
―― そのささやかなひと手間だけは、
機械から、お返ししたかったのです。
職人を超える1杯も、
振る舞った相手が黙る1杯も、
ボタンひとつのマシンでは、
決して、たどり着けない場所に、あります。
世の中の家庭用マシンは、
おおまかに、2つの方向に分かれます。
ひとつは、全部やってくれる便利さ。
ボタンひとつで、平均的な1杯が出てきます。
もうひとつは、お店と同じ、本格の味。
ただ、こちらは、10万円を超えるものが多い。
私たちが立っているのは、その
ちょうど真ん中、すこし下のあたりです。
便利さを、ほんの少しだけ手放していただくかわりに、
お店と同じ味の質を、
ご家庭の手の届くところまで。
それが、私たちが選んだ、立ち位置です。
じつは、近いうちに、
ひとつ、ご報告させていただきたいことがあります。
長らく試行錯誤を重ねてきた、
新しいかたちのマシンを、
もうすぐ、皆さまにお届けできそうなのです。
くわしいことは、次のお手紙の中で、
きちんと、お話しさせてください。
ひとことだけ、
聞かせてください。
―― 8つの動画のなかで、
いちばん、淹れてみたいのは、どれですか?
3通目のお手紙で、お答えします。